飲食店の事業譲渡とは
事業譲渡とは会社が行っている事業の一部を会社に譲渡することであり、飲食店の事業譲渡とは、経営している飲食店の所有権を他者に譲渡することです。譲渡の方法として、売買、贈与、交換の3種類がありますが、大抵の場合は売買によって事業が譲渡されます。事業譲渡と名前が似ている株式譲渡がありますが、両者の違いも理解しておきましょう。事業譲渡とは事業を譲渡する手法で株式譲渡は株式を譲渡する手法、前者は譲渡しても会社の経営権、独立性を失うことはありませんが、後者は経営権そのものを譲渡してしまうことになります。
以下で飲食店の事業譲渡のポイントや手順について詳しく解説していきます。事業譲渡について理解したい人にとっては有益な情報になるように解説しますのでぜひ読んでください。
事業譲渡の目的を明確に
まず事業譲渡する際に、なぜ譲渡するのか目的を明確にしておかなければなりません。目的が曖昧な状態で譲渡してしまうと、後で後悔してしまう可能性があるからです。なぜ譲渡するのか、譲渡することによってどのようなメリットがあるのか、譲渡した場合の将来のことも考える必要があるでしょう。
ここで事業を譲渡した場合のメリット・デメリットを解説します。
事業譲渡、売り手のメリット
- キャッシュインがある
- 他の事業に集中できる
- 後継者問題の解決
キャッシュインがある
事業を売却して譲渡することにより、売却金額が得ることが出来ます。事業譲渡によって得た金額を、他の事業の資金、新たな事業の資金や会社の経営の資金にすることが可能です。
他の事業に集中できる
もし飲食だけでなく、たくさんの事業を展開しているとなると、一つの事業を譲渡することによって、その譲渡した事業に費やす時間、費用を他の事業に費やすことができるというメリットがあります。実際に、事業を譲渡することによって他の事業が急成長したという会社は多く存在します。
後継者問題の解決
日本は少子高齢化ということもあり、後継者不足という問題があります。事業譲渡によって、経営者が高齢でやむを得なく廃業してしまうなどの後継者不足問題を防ぐことが出来ます。
以上が事業譲渡における売り手のメリットでありますが、メリットがあるということは手続が煩雑、負債を肩代わりしてくれるとは限らないなどのデメリットも存在します。しかし明らかにデメリットよりメリットのほうが大きいといえるでしょう。
事業譲渡、買い手のメリット
以下で買い手のメリットを解説します。
- 新規事業を低コストで始めることが出来る
- リスクを承継しなくてもよい
新規事業を低コストで始めることができる
新規事業を一から立ち上げる場合に比べて、事業を譲渡するということは以前経営していた技術や場合によっては従業員も引き継ぐことが出来るので時間とコストを大幅に削減することが出来ます。
リスクを承継しなくてもよい
買い手側は売り手側の承継したくない負債を承継しなくてもよいのです。これはかなりのメリットだといえるが、偶発的債務や簿外債務などの、買い手側が把握していない負債を承継してしまう可能性もあるので、買い手側は事業譲渡の際、その事業にどのような負債が存在するのか詳しく調べる必要があります。
しっかりとした価値のアピールを
ここまでで事業譲渡する場合に目的を明確化することなど事業譲渡における買い手、売り手のメリットやデメリットについて解説しました。ここで売り手にとって大事なことは、しっかりとした価値のアピールを買い手におこなうことです。当然のことですが、買い手がその会社の事業に魅力を持ってくれなければ、買われることはありません。買われるためには、自分の事業にどのような価値があるのかを考え、それを買い手に分かりやすく伝える必要があります。
事業譲渡は専門家に相談を
事業譲渡には手続が煩雑であるというデメリットがあります。そこで買い手と売り手の仲介をしてくれるM&Aアドバイザーなどの専門家に相談することをおすすめします。専門家に相談することによってどのようなメリットがあるのかを以下で解説します。
- 初心者でも事業譲渡が可能
- 仲介役がいることで手続が円滑に
初心者でも事業譲渡が可能
専門家に相談する最大のメリットは初心者でも事業譲渡が可能なことでしょう。事業譲渡する場合、詳しい専門知識に加えて、特別決議等の複雑な手続、経営的な視点、財務会計的な視点も必要となるため、経営者が独自でおこなうことは困難だといわれています。このような知識が足りていないまま、事業譲渡を行うとかえって手間がかかる可能性も十分にあります。
仲介役がいることで手続が円滑に
専門家に相談せず事業譲渡をおこない、買い手と売り手の間で意見の衝突が生じた場合、解決するのは困難だと考えられます。最悪の場合、契約が破棄されるおそれもあります。しかし専門家に相談することで、専門家は知識、経験が豊富なので、意見の衝突が生じた場合でも両者が納得のいくように解決し、事業譲渡を円滑にしてくれるでしょう。
飲食店の事業譲渡の手順
事業譲渡の際、専門家に相談すると述べましたが、オーナーも事業譲渡の手順を把握しておいたほうが手続を円滑に進めることが出来ます。なので以下で事業譲渡はどのような手順で行われるのかをおおまかに解説していきます。
- 事業譲渡の相手先を見つける
- 意向表明書の提示
- 基本合意書の締結
- デューディリジェンスの実施
- 契約書の締結
- 引継ぎを行う
このような手順で事業譲渡は行われます。
事業譲渡の相手先を見つける
事業譲渡を行う際、目的の明確化することは解説しましたが、その目的を達成することができるかどうかを基準に相手を見つけなければなりません。譲渡先は親類、従業員、知人の紹介で知り合う場合もありますが、自分で探してみて、見つからない場合はM&Aアドバイザーに代わりに探してもらうことが出来ます。事業譲渡の相手先を見つけるうえで、大切なことはじっくり選ぶことです。今すぐ、譲渡したいからといって、譲渡先のことを深く考えずに譲渡してしまっても納得のいく事業譲渡はできないでしょう。
意向表明書を受け取る
意向表明書とは、買い手候補が売り手の経営陣や株主に対して提出する書面の事を指します。意向表明書の内容として、その企業を購入したい意向が示されているほかに、買収の目的、希望買取価格、取引スケジュール、どのような形態で企業を購入するのかという買収方法が記されています。
意向表明書をもらう前に譲渡先候補を見つけたら、その譲渡先に飲食店の情報を伝え、経営理念など、これまでどのようなビジネスモデルで行ってきたかなどのことを伝え、それを聞いたうえで譲渡先候補(買い手側)は意向表明書を作成し売り手側に提出します。
売り手側が意向表明書を受け取った際、注意しなくてはならないことは、気になったことはどんどん質問するということです。意向表明書をもらう段階で譲渡価格や設備を引き継ぐかなど明確でなくてはなりません。意向表明書に疑問があった場合、曖昧にせず、気になったことは質問することが非常に重要です。もし曖昧にした状態にすると、次の手順に進んでしまってから曖昧にしていたことが原因で問題になり得る可能性があります。このようなことを防ぐためにも、疑問点はしっかり質問し、なくしておく必要があります。
基本合意書の締結
まだこの基本合意書の段階で契約が成立するわけではありませんが、基本合意書とは基本的な事項が合意できた時に締結される書類のことをいいます。基本合意書には売買に関しての大まかな条件、買収調査に関する事項、M&Aの全体的なスケジュールなどが記載されています。買い手側と売り手側の双方が意向表明書に納得できた場合に基本合意書が締結されます。基本合意書を締結することで、条件のすれ違いを防いだりすることができ、大きな役割を果たしますが、小規模なM&Aの場合には基本合意書の締結が省略されることもあります。
ディーデリジェンスの実施
ディーデリジェンスとは転じて投資やM&Aなどの取引に際して行われ、買収対象となる企業の財政内容、事業内容、法律面を調査し、その正確さを確かめることをいいます。買い手から公認会計士などが派遣され調査が行われ、基本合意書の記載に基づいて実施されます。
ディーデリジェンスを実施することで、買い手側は売り手側の飲食店の詳細を把握できているので、事業譲渡後に双方での問題が少なくなります。
契約書の締結
ディーデリジェンスを実施し問題がなければ、事業譲渡契約書が締結されます。そして事業譲渡契約書が締結された際に、株主総会の承認が必要になることがあります。譲渡される飲食店の株を保有している株主は、所有する株式を売ることを企業に請求する権利がありますので、事業譲渡する際、売り手は買い手だけのことを考えるのではなく、株主のことも考慮しなくてはなりません。
引継ぎを行う
以上の手順を問題なく終えると引継ぎ作業が行われます。その飲食店で働いている従業員やお客様にも知らせなくてはなりません。従業員に納得させるために、知らせる時期や方法も考えなくてはなりません。
飲食店を事業譲渡するなら飲食店のツナグへ相談
ここまで読んでいただいた方ならもうお分かりかもしれませんが、飲食店を事業譲渡するならM&Aアドバイザーに相談することをおすすめします。またM&Aアドバイザーに相談するなら、事業譲渡する目的や、譲れない条件など、考えや情報をまとめておく必要があり、まとめておくことによって円滑に作業が進むでしょう。
しかしM&Aアドバイザーも慎重に選ばなくてはなりません。M&Aアドバイザーによって対応が異なることがあるからです。契約終了後もしばらくの間は仲介してくれる親切なアドバイザーもいれば、契約終了後はアドバイザーに仲介せずに自ら譲渡先に問い合わせなければならない場合もあります。