飲食店開業前に理解しておくべき損益分岐点について

Break-even point

飲食店を健全に営業するためには、利益を安定的に生み出す必要があります。利益を検討する上で「損益分岐点」について検討しなければなりません。本記事では、損益分岐点とは何かを解説します。

1.損益分岐点とは?

損益分岐点とは、一体何かを簡単に説明しておきましょう。会社経営をする上での最優先とも言える目標は、常に黒字で経営を維持することが出来るかどうかではないでしょうか。会社を黒字にするためには、売上げと費用がちょうど0になるポイントを探る必要があります。
黒字でもなく赤字でもない「0地点」を「損益分岐点」と言います。経営する上では損益分岐点を定めることで、赤字か黒字かを判断することが可能になるので、覚えておくようにしましょう。

2.損益分岐点の計算方法

損益分岐点を損益分岐点売上高と呼ぶこともあります。損益分岐点売上高とは、「赤字」と「黒字」になる分岐点を表す売上高になります。飲食店では、損益分岐売上高より高い状態を維持すれば、黒字経営となります。一方で、赤字ばかりを出していると、その名の通り赤字経営になってしまうというものです。

飲食店での損益分岐点を割り出すためには、「損益分岐点売上高」を求めて必要な値を設定するようにしましょう。計算は以下の方法でおこないます。
損益分岐点=固定費÷(1-変動費÷売上)です。
計算式で重要な指標となる「固定費」と「変動費」をしっかり割り出しておくと、損益分岐点の費用が正しく導けるようになります。

2-1.固定費を割り出す

固定費とは、売上によって価格が変化しない固定の支出のことをあらわします。主な固定費として次のようなものがあげられます。

・家賃
・調理器具のリース料
・固定資産税
・支払い利息

お店の営業にかかわらず、毎月発生する費用と認識しましょう。固定費は何があっても発生する費用のため、経営をする際は固定で発生する費用は何かを特定しておくようにしましょう。

2-2.変動費

一方、変動費はお店の売上とともに変化するものです。主なものとして、次のようなものがあげられます。

・食材費
・光熱費
・人件費
・販促費

食材は、仕入れ数や販売数によって変化します。同じ個数をコンスタントに販売していたとしても、食材の価格変動により1食あたりの原価が変動することもあります。
お店の経営状態によって変化するものは、変動費のため、毎月固定ではないと認識しておきましょう。

しかし、変動費の平均を毎月どの程度かかるのか把握しておくことは大切です。
把握しておくことで、変動費と固定費が平均してどの程度発生しているのかを把握でき、経営戦略の参考に役立てることが可能です。

2-3.限界利益と限界利益率を知ることも大切

損益分岐点を理解していくと、必ず「限界利益」と「限界利益率」の言葉が登場し、損益分岐点と一体何が違うのか混同してしまうことがあります。
損益分益点を理解する上で大切な指標となるので、関係性を覚えておきましょう。

限界利益とは、固定費をすべて回収するために必要な費用を把握するための指標です。
限界利益を求める際は、売上高から変動費を引いたものが限界利益となります。限界利益率とは、「限界利益」を売上で割った値のことを指します。
限界利益が高ければ高いほど、お店に残る利益は多くなり、限界利益を固定費に充てることが可能となり経営を常に健全な状態へ維持することが期待できます。
開業時には限界利益の値をしっかりと設定しておくようにしましょう。

3.損益分岐点比率、安全余裕率について

損益分岐点を求めるだけでは、安定した経営戦略が出来るわけではありません。
損益分岐点比率と安全余裕率を把握し、経営戦略の指標として役立てるようにしましょう。
役に立つ指標として「損益分岐点比率」と「安全余裕率」について紹介します。

3-1.損益分岐点比率とは

実際の売上高と損益分岐点売上高の比率を計算した指標が、「損益分岐点比率」になります。比率が低ければ、飲食店の経営状態が悪化しても影響を受けないと言われています。
一般的には80%以下が良いとされているので、80%以下を目指しましょう。

一方で比率が高く100%を上まわってしまうと、赤字経営になります。赤字経営にならないよう、比率に注意することが大切です。損益分岐点比率の計算方法は下記の通りです。
損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100
損益分岐点比率を把握して、健全な状態を維持するようにしましょう。

3-2.安全余裕率とは

安全余裕率は、売り上げがどの程度低下したら損益分岐点に到達するかを知るために大切な指標となります。
安全余裕率を把握しておくことで、損益分岐点に到達する前に経営戦略に対して対策を打つことが可能です。
安全余裕率を求める計算方法は下記の通りです。

安全余裕率=(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高×100

安全余裕率を把握しておくと、お店の経営に余裕があるのか、それとも赤字になりそうなのかを予測することが可能なので把握しておくようにしましょう。

3-3.2つの指標の関係性

2つの指標を足すと、必ず100%になります。計算をする際は、双方の数値を割り出しておくと、正しい計算がおこなわれているかを判断することが可能です。
100にならなければ、どちらかの数値が間違って計算されているので気をつけましょう。経営を安定する際には、活用できる指標なので、積極的に活用するようにしましょう。

4.損益分岐点の分析方法で何が分かるのか

損益分岐点の計算方法や役割を理解しても、数値を知ることで飲食店経営の何に役立てるのかよく分からないという方もいるでしょう。
損益分岐点を知ることで次のようなことを知ることが出来ます。

4-1.開店前に必要な売上高を算出出来る

飲食店を健全に経営するためには、売上高がどの程度必要なのかを把握しておく必要があります。
シミュレーションをした際に、損益分岐点の数値を達成するために必要な来店人数と、販売しなければならない商品の個数を算出した際、無謀と感じてしまうこともあるでしょう。

厳しい数値を算出してしまった場合は、失敗のことを考えてあらかじめ出店することを諦めるということも可能です。
一方で、お店を出店する際に、売上高から逆算して、「この地域なら出店しても安定した経営が可能」と判断することも可能になります。

出店すべきかどうかを判断する上で、決め手にかけている場合は、損益分岐点を割り出してシミュレーションをするようにしましょう。

4-2.お店で足を引っ張っている要因を割り出すことが可能になる

損益分岐点を算出しておくことで、お店の経営を不安定にさせている要因は一体何かを割り出すことが可能になります。

例えば、お客さんが多く入り多数の商品を販売しているのに、損益分岐点売上高に近い売上であれば、高いコストを下げる必要があります。
損益分岐点を計算する際には、固定費、変動費が明確になっているため、目で追うように余分な要因は一体何かを割り出すことが可能です。
無駄を削減すれば、経営が安定するので、常に損益分岐点を確認しながら経営に役立てましょう。

5.損益分岐点を下げるには?

健全な経営を実現するためには、損益分岐点を下げる必要があります。損益分岐点の下げ方は様々です。次のようなアプローチで損益分岐点が下がらないのか検討するようにしましょう。

5-1.固定費の見直し

固定費が高い比率を占めているのであれば、固定費を見直すようにしましょう。例えば交渉しがいのある家賃、リース品の賃料などは一度業者に相談するようにしましょう。
特にお店で使用頻度が少なく、開店時に契約している設備などがあれば、すぐに契約を見直すようにしてください。

5-2.変動費の見直し

変動費は固定費に比べて見直しがしやすいコストです。変動費を抑えることで損益分岐点を下げることが可能であれば、変動費を見直すようにしましょう。
例えば、食材の仕入れ先の変更や、アルバイトスタッフのシフト調整は、変動費を抑える上で対策が取れる手段となります。

FLコスト(食材費と人件費)を見直すことで、損益分岐点を下げることが出来る可能性があるので、一度検討するようにしましょう。

コストを下げることで損益分岐点を下げることを達成しても、サービスの質の低下が生まれないように注意をする必要があります。
コストを下げてお客さんに提供するサービスの質に影響が出てしまうのであれば、見直すようにしてください。

5-3.収益の高いメニューの開発

売上高を向上させることで、損益分岐点を下げることが可能です。商品の中には、質の良い商品だけでなく、利益率の高い商品を開発するように心がけましょう。
商品毎の利益率を把握しておけば、何の商品をどの程度販売すべきなのかを予想することが可能になります。原価率30%となるような商品を作り、収益を狙いましょう。

しかし、原価率の良い商品を設定しても、集客につながらないこともあります。
収益性の高い商品だけでなく、お客さんが訪れるような目玉商品を設定し、お客さんを誘導する方法も併せて設定しておくようにしましょう。

5-4.オペレーションの改善

光熱費などは企業努力によって改善することが可能です。最もやるべきことが、オペレーションの改善です。無駄な作業が発生すると、人件費、光熱費が無駄に発生してしまう恐れがあります。
無駄な費用を発生させないためにも、開業後は常に無駄を探し業務の効率化を図るようにしてください。

5-5.開業前に戦略をしっかり練ることが大切

損益分岐点で失敗しないようにするためには、正しい数値を開業前に設定することが大切です。
いい加減な数値を設定して開業をすると、開業後にリカバリーが出来ない可能性があります。
開業後に失敗してしまうと、失うものが多くリスクが高いので、開業前にしっかりと分析するようにしましょう。

6.まとめ

飲食店を安定的に経営するためには損益分岐点が重要です。開業後、黒字を安定して出し続けているお店だから分析をしなくても良いということではありません。
お店を守るために必ず損益分岐点を計算しましょう。
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